学校教育での取り組み
前回に引き続き、リーダーが部下・社員の主体性を引き出すことをテーマに述べていきます。
テレビ東京系列のカンブリア宮殿にも取り上げられた、元麹町中学校の工藤勇一校長(現在は横浜創英中学・高校の学校長)。
その麹町中学在籍時の取り組みは、固定観念に縛られない斬新なものでした。
学校教育の目的は、「子供達が社会でよりよく生きていけるようにする」「自ら考え、動く、自律心を養わせる」ことである。
この教育目的のもと、さまざまな従来発想に囚われない改革を進めていかれます。
クリティカル思考に基づく改革施策
今回は二つの改革を紹介します。
一つが、誰もが学校教育では当たり前と考えていた「宿題廃止」です。
宿題を生徒に課すということは、先生の押し付けであり、子供達の自律心を損ねる行為である。
また、一律に同じ内容を全ての子供達に課すことになるので、”できる子”にとっては、理解できていることを繰り返す無駄な作業になる。
逆に”できない子”にとっては、ハードルが高過ぎて途中で考えることを諦める。もしくは端(はな)からやらない状況になる。
こうした考え方のもと、宿題を廃止して、子供達一人ひとりの課題に応じた自宅学習を行うことを促します。
二つ目が、「中間・期末テスト廃止」です。
テストの前になると”アタリ”をつけて出題範囲を予想し、いわゆる一夜漬けで臨む。多くの方がご経験がおありだと思います。
しかし、こうした学習は記憶が定着化しません。かつ、子供達の実力を正しく測定することから考えても妥当とは言えません。
こうした弊害をなくして学びを定着化させ、さらに言えば自ら学ぶ学習意欲を高めるため、教科毎に節目に、出題範囲を狭くして頻度多くテストを実施する「単元テスト」と名付けられた方式に変更します。
しかも一回目のテストに納得ができなければ二回目の再テストに挑戦できる仕組みとしました。評価は二回目の再テストが採用されます。
こうなると多くの子供達が再テストに挑戦します。
そして、わからなかった箇所を先生や友人に聞いて再テストに臨んでいきます。
さきほどの、自宅学習はわからなかったことを個人で考える時間に当てます。
さらに、これまでクラスの中で話をしたことはないものの、苦手分野の教科の得意なクラスメートに自ら働きかけて教えを乞う動きをする子供が現れます。
そして、こうした活動が拡大して、他のクラスにまで出向き”できる子”に教えてもらうということが行われていきます。
こうした活動の結果、学力向上はもちろん、子供の自律心が高まることで精神的な成熟度が向上し、三年生になる頃にはイジメがなくなる状態になるそうです。
自己決定感
学校も職場も、同じ国の人間が連続的に運営をしています。
自主性を基にした運営が企業組織においても苦手です。
あれこれ組織・上司が、過保護・過干渉気味に社員に接し、考え、決めさせ、責任を負わせることをさせずに受動的な社員を多く生んできました。
人口増などの要因で経済が自然と伸びていき、技術的にも大きな革新のない時代は、少数のリーダーの号令一下、皆が同じ方向に向いて言われた通りのことを効率的に進めていれば成果が上がりました。
しかし、これからは逆の状況を迎えます。
一人ひとりの社員が、持ち場持ち場で当事者意識をもって自己革新を図りながら挑戦していってもらわなければなりません。
人のモチベーションの大きな要素として自己決定感が大きな要素として挙げられます。
シンプルに言えば、
・自身が担当する業務の目標設定から活動内容まで、全て自分の裁量で進めていく。
・答えのない課題に対して、迷い、不安を感じながらも意思決定を行う。
ということがあたります。
この自己決定感は、モチベーションだけでなく主体性を育むことにも大きな影響を及ぼします。
環境変化が激しく、成果を上げていくことの難易度が高まる時代を迎えていくにあたり、われわれリーダーは、自己決定を促す工藤先生の取り組みが大きなヒントになると思います。
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