コミュニケーションの難しさ
われわれ日本人は、国内においてほぼ日本語で意思疎通をしています。
よって、欧米各国と比較してコミュニケーションはスムーズに行われるものと思われがちです。
しかし、言葉というものは便利なものではありますが過信はやはりできません。
というのも、10人の人に「コミュニケーション」という単語の意味を30字以内で書いてくださいとお願いすると、おそらくAさんとBさんは微妙に解釈が違う。AさんとCさんでは大幅に言葉の捉え方が違う。
まさに十人十色の回答になることでしょう。
この単語をつなぎ合わせて、われわれは自分の頭の中にある考えを伝えていくわけですが、言葉にして発した段階で解釈が人によって変わりますので、100%は伝わることがないでしょう。
経営方針発表の場での出来事
ある会社の経営方針を聞く機会がありました。
具体的には、その会社の社長と縁ができて「近いうちに社員をホテルの会場に集めて1~2時間、経営方針を発表する場があるので来ないか?」と誘いを受けました。
日程が空いていたこともあり、そのホテルに向かいました。
予約されている会場につくと既に来られていて社員さんと話されています。
声をかけると、会場の後ろに用意された座席に案内されました。
そして、しばらくして経営方針の発表会が始まります。
営業構造の課題を中心に述べられて改革の必要性を訴えられます。その後、組織体制の大幅な刷新も含めた改革プランを話されます。
やや性急な感はありますが、客観的に観て、予想される外部環境の変化からいえば先手を講じるよい手立てです。
一方通行のコミュニケーションの限界
その発表後は懇親会が用意されていました。
立食形式とのことだったのでカバンを預けようと思い、1Fのクロークに向かいカバンを預けようと並んで待っていました。
すると斜め前方に、さきほどの会社の社員さんが二人おられます。社章を見てわかりました。
その方々は私は面識がありませんし、経営方針の発表も後ろの方にいたので私のことは全く気に留めておられません。
盗み聞きをするつもりはなかったのですが、二人の会話が聞こえます。要約するとこんな話をされています。
「社長の話どう思った?」
「あの改革は大変だよ。現状の仕事を回すだけでも手一杯なのに無理だよ。」
「そうだよな。それにあの改革やる意味があるのかね?」
「まったくまったく。どうせすぐに元に戻るよな。」
といった調子で、さきほどの方針に対してかなりネガティブな会話をされています。
私からすると客観的に観て今から改革しなければ、現在のビジネスモデルは限界が生じてジリ貧の道を辿るのは明白です。
また、社長から事前に経営方針内容を聞いていることもあり、どうも方針内容にも誤解があり捉え方がおかしいように感じます。
この件は、懇親会後に社長に率直に伝えて、別のアプローチでコミュニケーション・ギャップを解消されることになりました。
一方通行から双方向へ
どんなに話のお上手な方でも、冒頭に記したように人は言葉の解釈が違います。
また、人は情報量や見識も違いますので同じことを伝えても捉え方が変わります。
ですので、一方通行で考えや想いを伝えようとしても思う通りにはなかなかいきません。
やはり、理解や納得を深めようと思うならば対話が必要です。
方針を伝えた後に、質問や意見交換の機会を設ける。
「今、社長が話をされた〇〇という言葉を詳しく補足していただけませんか?」
「なぜ、A分野は確かに未開拓ですが、われわれには××という理由でハードルが高いように思うのですが、いかがでしょうか?」
「営業部署の負荷がかなり高まり、現顧客のフォローができずに業績が落ちるのではないでしょうか?」
こうした質問を受け、回答して、また質問を受ける。こうした対話をする中で、相互に理解が深まります。
社長の立場からすれば、
・■■のテーマの話はうまく伝わっていない。
・社員には、A分野に関する現在の情報がほとんどないので、昔からのイメージで難易度をかなり高く見積もっている。
・なぜ新方針なのか?意味づけが不十分で、このままだと営業現場が動かないかもしれない。
などのことが観えてきて、その対応方法が具体的に考えられます。
社員さんからみても、補足説明を受けることにより、抽象的に理解していたことが鮮明になったり、誤解が解消したりします。
また、方針を実行する意義を見出すことにつながり、実行の動機付けがなされることも期待できます。
急がば回れといいますが、リーダーは重要事項はこうした対話が求めらます。
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