人間の脳はできるだけ考えないようにできている
動物は自己保存を最優先課題としています。
そのため危険な状態が生じた際に、全力で逃げられるよう余計なエネルギーをかけずに生活しようとするそうです。
当然、われわれ人間も動物ですので本能的にエネルギー消費を抑えるようにしています。
では人間の場合、どこで最も多くエネルギーを消化しているのでしょうか?
そうです。圧倒的に頭です。脳が最もエネルギーを消費します。
言葉を変えれば「考える」ことがエネルギーを著しく消化させます。
ある説では、ルーティン作業を行う際に使用する脳のエネルギーと、答えが明確にあるわけではない、新規テーマを考える際の脳のエネルギー消費は7倍~8倍違うと言います。
思索するということは、ある意味、本能に逆らう活動をしており疲労を伴うものと言えます。
考える葦
日本で言えば、江戸時代の前期に活躍したフランスの思想家パスカルが、次の有名な言葉をわれわれに遺していますね。
「人間は葦にすぎない。 それは自然の中でもっとも弱いものである。 しかしそれは考える葦である」
葦とは「あし」もしくは「よし」と読み、川や湖の水辺に自生する、背の高い茎を伸ばす植物のことです。
最近では見られなくなりましたが、日差しを抑えて風を室内に通す葦簀(よしず)の材料になっているものです。
パスカルは、人は葦のように生物としては弱々しいものである。しかし、「考える力」を高めてきたことにより自然界のなかで頂点に立ち、繁栄を享受していると述べています。
世の中の流れに逆らう
1990年代後半から普及してきたインターネット。
社会変革をもたらし、我々の生活もビジネスも変えてきています。
昔は、何かを調べる時は、あの分厚くスペースを取り高価な百科事典で調べたりしていましたが、今や携帯電話で、東京ドーム何万個分の百科事典の情報が瞬時に調べられます。
昭和のリアルな世界だけで人と交流する時代と比べれば、何百倍の人と接点を持つようになっているでしょう。
メタバースという仮想空間も創られ、これからはリアルとヴァーチャルの2つの人生を歩むともいわれます。
われわれの生活の質や生産性向上に大きく貢献しています。
しかしながら負の側面として、われわれの思索する時間、ひいては考える力を低下させている面もあると感じます。
情報量と思考力は反比例すると言いますが、検索すれば何らかの回答が多くのことにおいて出てきます。
結果、先に述べた人間の自己保存本能も加わり、自ら考え、答えを導き出すという作業をしなくなります。
ましてや、これからの時代は話題のChatGPT始め、AIがますます実用化されていきます。
この傾向は加速化していくことでしょう。
一説には、映画の世界のようにAIの回答に身を委ね、人がAIに従属する世界が近づいているとも言われます。放っておけば思考力はどんどん弱まっていくのは間違いありません。
・意図的に手持ちの情報で仮説を立案してから、その検証作業をネットで行う。
・電子機器を使用せず(検索せず)に、紙とペンなどアナログ方式で自問自答して回答を導き出す。
・哲学的な答えのないテーマについて考える機会を定期的に持つ。
など、頭に汗をかく時間を持つようにしていきたいと思います。
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