「導き」がリーダーシップの中核
リーダーシップの定義をネットで検索すると、
・目標を定め、チームをつくり、成果を出す能力
・組織をけん引する資質や能力
・指導力、統率力
といった言葉が多く出てきます。
現代経営学の父と言われるドラッカーにおいては、
・組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に確立すること
と述べています。
もちろん算数のように一義的な定義があるものではなく、何が正しいというものではありませんが、私はリーダーシップを以下のように捉えています。
リードという言葉が「先頭で導くこと」であることから、社員やさまざまな自社に関与するステークホルダーを、よき世界に導くこと。
自社がめざすべき場所を指し示し、社員・メンバーが歩む道筋に火を灯すことではないかと考えています。
さらに嚙み砕くと大きく三つのことを行うことと思います。
Will Can Must
一つは、Will(実現したいこと)、Can(強み)、Must(求められること)の観点を用いて組織のあるべき姿を描くことです。
Mustから補足すると、STEEP分析などから導き出される、自社だけでなく日本の多くの企業に影響を及ぼすであろうマクロ環境変化。
自社の川上・川下、そして競合企業の動向などのミクロ環境変化。
こうした外部環境が三年、五年、さらにいえば十年後、どのように変化していくことが想定されるのか?その中で、自社が存続・成長していくために、どのようにあるべきか?
Willである、理念・大切にしていきたい価値観に沿って、これから何をしていくべきか?どのような状態を実現したいのか?
自社特有のCan(強み)を活かして、どのような可能性が見出していけるのか?
このWill、Can、Mustの観点から「よき世界」、表現を変えるとビジョンを描くことです。
ビジョン・想いの対話による共有
そして、社員・チームメンバーに、ビジョン・方針の理解を促し、実行の動機付けを図ることになります。
この際のポイントは二つあります。
人は、他の動物と違って意味を求める動物です。
そのことに意味が感じられれば、障害・困難があったとしても、それを乗り越える努力をしていきます。
逆に、意味が感じられなければ、人からいくら強制されようとも、実行するスキルを有していても行いません。
私たちがモチベーション高く動くには意味が必要なのです。
このビジョン・方針を行うことで、「われわれに、どのような価値があるのか?どんな貢献を果たすことができるのか?」意味をしっかりと伝えていくことが一つは求められます。
また、ビジョン・方針は、往々にしてリーダーが一方的に伝達するケースが多くなります。
しかし、いくら丁寧に説明しても、ベースとなる情報量・知見の違い、思考プロセスが十分に見えないことなどから、聞き手の社員・チームメンバーはリーダーが思うほど理解していません。
当然、人間は「理解の範囲内でしか動けない」ので実行レベルも弱くなります。
理解を促進するには、一方通行のコミュニケーションではなく、双方向の対話が効果的です。
具体的には、まずビジョン・方針を同じように一通り伝達します。
その後、社員から質問や提案事項を投げかけてもらい対話をしていきます。
イメージは以下のようなものになります。
社 員A「環境変化からZ分野に注力するとの話でしたが、具体的に言えば何を行うことを想定しているのでしょうか?」
リーダー「〇〇と××が考えられると思っています。」
社 員B「〇〇を推進していくために、改善・強化しなければならないことは、どんなことが挙げられるでしょう?」
リーダー「まず技術面においては◆◆の向上が不可欠だね。営業面においてはMA(マーケティング・オートメーション)機能の充実がいるだろう。」
社 員C「生産面でいえば、■■が重要でしょう。既存設備では対応しきれないでしょうから、新規投資ないしは外注活用を考えなければなりません。」
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もちろん、一方的に伝達するよりも時間はかかります。
ただ「急がば回れ」です。
対話を通じて、
・方針の言語内容の共通認識が図られます。
・方針に至るまでのロジックがわかり納得感が高まります。
・方針を具現化するアイデアが対話を通じて生まれてきます。
動ける環境整備
最後の三つ目は、一言でいえば社員・チームメンバーが動きやすい状況をつくることです。
シンプルにいえば、
・役割分担を明確にする。
・為すべき課題の優先順位付けを伝えるとともに、迷った際の判断基準を明確化する。
・効果的に課題を進めていくための資源(設備・人材・ツールなど)を用意する。
などを行うことです。
噛み砕くと述べてきた三点のことを行うことが、リーダーシップを発揮するということになろうかと考えます。
ただ、このリーダーシップが真に機能するには、リーダーに対してフォロワー(社員・チームメンバー)が、どれだけ信頼を置いているかが重要なファクターです。
次回以降の記事では、この点を述べていきます。
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